文学フリマ大阪11にご参加・ご来場いただき、誠にありがとうごました!!

 2023年9月10日(日)に天満橋OMMビルにて開催されました「文学フリマ大阪11」に、ご参加・ご来場いただきました皆様、本当にありがとうございました。開催してから一週間が過ぎ、ようやく「ああ、今年も文フリ大阪終わったなぁ~」と実感が伴ってきました。

 今年はOMMビル2階にあるメインホールをすべて借り切っての開催でした。文学フリマ大阪としては歴代最大規模の開催となりました。X(Twitter)でも呟きましたが、前回の2676人を大幅に上回り、出店者・来場者あわせて4,282人の方にお越しいただきました。

 盛会となりましたのも、ひとえに皆さまのおかげです。設営や撤収等は、手伝っていただいたボランティアスタッフ様の力なくしてはとうてい困難なことでしたが、おかげさまで初めてのA・B・Cホール全体を使った大きな規模での設営を完了することができました。ボランティアスタッフ様だけでなく、出店者様、そして来場者の方にもお力を貸していただき、撤収時にはスタッフと同じくらいの遅い時間まで残って下さった方もおられました。誠にありがとうございました。あらためて文学フリマ大阪に関わって下さった方々すべてに、心より感謝申し上げます。

 さて、【文学フリマ大阪11】で購入された作品を、今まさにお手元で楽しんでいらっしゃる皆様、ぜひハッシュタグ「 #文学フリマで買った本 」を付けて感想投稿をお願いします。Twitter/Instagram/はてなブログなどにてお待ちしております。

 さらに、フィードバックを募集しています。
 「文学フリマ大阪11」につきまして、後から気づいた点やご意見などありましたら、下記のページからお寄せください。
 次回以降の運営に参考となります。どんなものでもかまいませんので、ぜひお願いします。

 ところで、今回の文学フリマ大阪11のカタログの「表紙」になっている着物姿で読書をする女性ですが、何を隠そうこの女性は「お市の方」なのです。
 御歌頭(okazu)様の墨絵で、うさぎ年なので、着物の裾にちょこんとうさぎちゃんも乗っかっております。

 『日本人名大辞典』によれば、お市の方は1547年生まれで、織田信長の妹。信長の命令で、近江の小谷城浅井長政に嫁ぎ、茶々(淀殿)、初(常高院)、江(崇源院)と2男を産みます。浅井氏が滅ぼされると、柴田勝家と再婚します。しかし、豊臣秀吉に攻められて、越前の北庄城で勝家とともにお市の方は1583年に自害。名は市ですが、通称は小谷の方だそうです。
 辞世の句として「さらぬだに うち寝る程も 夏の夜の 夢路をさそふ郭公(ほととぎす)哉」があります。
 つまり、1583年、お市の方の没後440周年の記念といたしまして、表紙に採用いたしました。

 お市の方をテーマにした文学作品としては、谷崎潤一郎の『盲目物語』が有名でしょう。
 『盲目物語』は、お市の方の生涯と、秀吉のお市の方への執着を、弥市という盲人の遊芸人の視点を通して描き出しています。もみ療治をしながら、旦那に向かって問わず語りに、自分が経験したことを物語るというスタイルで、ややとっつきにくく読みにくい感じもあるかもしれませんが、声を聴くようにすいすいと読み飛ばすように、なんとなくわかれば良いと、聴くように読むと、そのうち文章が入ってきて面白くなってきます。

 正宗白鳥も『盲目物語』について、「日本古文文学叢書」に収められてるほうが似つかわしいと評価していて、油絵の美人ではなく絵巻物の美人が描かれていると述べています。

 『盲目物語』の面白いところは、谷崎のオリジナルキャラクターの法師武者朝露軒と主人公の二人が、負けが決定的になったあとの城内での最後の宴会中、どうやってお市の方を救い出すか、三味線の音の場所に「いろは」が割り当てられていることを利用して、誰にも気付かれず会話する場面です。

 本文ではこう解説されています。【すべてしゃみせんには一つの糸に十六のつぼがござりまして、三つの糸にいたしますなら都合四十八ござります。されば初心のかたがたがけいこをなされますときはその四十八のつぼに「いろは」の四十八字をあててしるしをつけ】るのです。そして、音を「いろは」に変えて、会話ができるわけです。
 朝露軒と主人公が、城の最上層に火が出た瞬間にお市の方を助けに行こうとするのだけれども、どさくさで中村文荷斎に怪しまれ朝露軒はぶった切られます。このパニック状態の描写も素晴らしく、茶々を運び出す主人公弥市の必死な顔が目に浮かびます。
 名場面としては、やはりお市の方柴田勝家の二人の最後の会話でしょう。柴田勝家が、こうなることがわかっていたのならば、あなたと祝言をするのではなかった、しかし武士は死んでいくのに、おんなこどもを連れるのはどうかと思うと言って、助かる道を選んで欲しいことを告げる場面です。この場面の描写というか、言葉遣いですが、音としてリアルに再生できるほどすらすら読めて、なにげに凄いリズム感の文章だと思いますので、ぜひ読んでみて欲しいです。

 ちなみに大阪にもお市の方のスポットがあります。

 谷町線四天王寺夕陽丘駅すぐ近くにある天鷲寺というお寺があって、その中に淀殿が建立された、柴田勝家お市の方の供養塔があるようです。

 

 

 写真のとおり、立派なお寺ですが、中に入るのは、たぶんお寺の人に電話をするなりあらかじめ許可が必要だと思います。私の個人的見解ですが、自由に出入りできるように門が開いているのを見たことがないので、たぶん、きちんとお寺に関わりのある人だけ入れるというところだと思います。


 さてさて、来年は文学フリマ大阪12となります。いったい誰が表紙になるのでしょうか。ちょっとした楽しみにしてくだされば幸いです。

 ところで、文学フリマ大阪ではスタッフも募集中です。文学フリマでスタッフやってみたいかもと思う方がおられましたら、ぜひURL先をご確認ください。

 全国でも募集中なのですよ。まずはご連絡ください。

 ではまた、来年にお会いしましょう。

(文責:副代表 猿川)